2019-2020年度 東京ラカン塾 精神分析セミネール:フロィトへの回帰 と オィディプスの彼方(11月01日開講)

フロィトへの回帰 と オィディプスの彼方

2019年09月23日,我々は,Freud の 80 回目の命日を迎えます.それを記念して,2019-2020年度の 東京ラカン塾 精神分析セミネール は,Lacan が 1953年09月26日に Roma で行った講演 :「精神分析における ことばの機能 と 言語の場」で提起した retour à Freud[フロィトへの回帰]の意義について,改めて問うことから始めます.

1950年代,精神分析は,特に英語圏において,全盛期にありました.Mitteleuropa から移住してきた多数の精神分析家たちは,イギリスと USA において,精神分析の臨床の裾野を広げました.精神薬理学はやっと誕生したばかりで,精神医学における治療法の中心を成していたのは,精神療法でした.精神分析は,最も本格的な精神療法と見なされていました.特に USA では,当時,精神科医のみが精神分析家の資格を取得することができ,かつ,精神科医が精神医学界のなかで「出世」するためには,精神分析家の資格を有していることが必須でした.ですから,学界のなかで「名誉」ある地位を欲する若い精神科医たちは,皆,教育分析を受け,精神分析家の資格を取りました.

しかし,そのような状況は,精神分析を大きく変質させてしまいました :「無意識」と「無意識的な思考」の代わりに,「自我」と「感情」が重視され,ユダヤ教の解釈学 Midrash の伝統に根ざした Freud の巧みな「解釈」の代わりに,所与の「意味」の「了解」と心理学的「共感」に力点が置かれ,科学的におよそ不可解な「死の本能」は無視されて,「自我」の強化と「性本能」の成熟による「現実適応」が精神分析の治療目標とされるに至りました.要するに,Freud の発見の真の意義は忘れ去られ,精神分析の本来的な可能性について問われることもありませんでした.

Lacan が「フロィトへの回帰」を彼の教えの標語としたのは,そのような文脈においてです.そして,「フロィトへの回帰」は,単純に Freud のテクストをドイツ語において読み直すことに存するのではなく,しかして,Freud に内在的な行き詰まりを超克して,「フロィトの彼方」へ,すなわち,「オィディプス複合の彼方」へ,歩みを進めることになります.

重要なのは,Freud の発見の真の意義を捉え直し,かつ,精神分析にその本来的な可能性を与え直すことです.そのために,Lacan は,精神分析を純粋に — すなわち,非経験論的かつ非形而上学的に — 基礎づける作業に取り組みます.その際,Lacan にとって本質的に重要な準拠となったのは,Heidegger の Denken des Seyns存在 の 思考]です.

2019-2020年度の日程の予定は以下とおり(変更の可能性あり):

2019年11月01, 08, 15, 29日(22日は休講);
2019年12月06, 13日(20日と27日は休講);
2020年01月10, 17, 24, 31日(03日は休講);
2020年02月07, 14, 21, 28日(3月一ヶ月間は休講);
2020年04月03, 10, 17, 24日 ;
2020年05月15, 22, 29日(01日と08日は休講);
2020年06月05, 12, 19, 26日.

毎回,開始時刻は 19:30, 終了時刻は 21:00 です.会場は,例年どおり,文京区民センター 内の会議室を使用する予定です(変更の可能性あり).どの部屋を使用するかは未定です.詳細は追ってお知らせします.

2019年08月06日